プレーナ型ダイオードの高耐圧化

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プレーナ型ダイオードの高耐圧化

・プレーナ型ダイオードを高耐圧化する方法は以下の3通りがある。
 ①ガードリングの使用:ガードリングを形成することで、ダイオードの弱点である
            PN接合の横端の電界集中を緩和させる。これにより、
            弱点が改善され、デバイスを高耐圧化させることが出来る。
 ②フィールドプレート:フィールドプレートを形成することで、原理は違うが、
            ①と同じくダイオードの弱点である、
局所の電界集中を
            緩和が緩和され、デバイスの高耐圧化に寄与する。
 ③保護膜の工夫:数千Vクラスのダイオードの場合の話。このクラスまで来ると、
         保護膜にも工夫が必要。保護膜には絶縁性の良い窒化ケイ素
         がよく使われるが、あえて若干の導電性を持つSIPOS膜を使用
         することで、保護膜表面の帯電を緩和し、デバイスの弱点となる
         デバイス内部のリーク電流パスを緩和する工夫。

以下、記事に詳細を記す。

 ■プレーナ型ダイオード高耐圧化の必要性
・ダイオードには、メサ型とプレーナ型がある。
・大雑把に言うと、プレーナ型ダイオードは性能が良いが、2000V以上の高電圧の
 遮蔽が難しい。
・なのでもし、プレーナ型ダイオードで高電圧の遮蔽ができれば、うれしい。
 なので、この記事で説明するような、高電圧遮蔽のための工夫が
 昔から研究されてきた。
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□メサ型/プレーナ型ダイオードの説明
 ・メサ型ダイオードは、シリコンに深ーいP拡散をして、チップの側面を
  ガラス系保護膜で保護する構造。
 ・プレーナ型ダイオードは、シリコンに穴あき酸化膜をつけて、穴の
  部分だけに浅い高濃度なP拡散をする。穴あき酸化膜の周りをSiO2系の
  保護膜で保護する複雑な構造。
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・メサ型/プレーナ型ダイオードにはそれぞれ以下の様なメリット/デメリット
 がある。
  ●メサ型:P拡散をすごく深くして、ぶ厚い空乏層を形成することで、
       逆電圧を遮蔽する。
       ⇒メリット:空乏層を厚くするだけで高耐圧化できる(極論)ので、
             比較的簡単。
       ⇒デメリット:ぶ厚い空乏層が抵抗となり、電力損失が大きくなる。
              またリーク電流も大きい。
              電力損失=発熱なので、メサ型ダイオードには
              あまり大きな電流が流せない。同じ大きさの
              プレーナ型ダイオードと比べると。
  ●プレーナ型:比抵抗の高いウェハに高濃度のP拡散をすることで、
         浅いP拡散(=薄い空乏層)で逆電圧を無理やり遮蔽する。
         ⇒メリット:抵抗となる空乏層が薄いので、電力損失が小さい。
               リーク電流も小さい。
               電力損失が小さいので、発熱も少なく、
               大きな電流が流せる。メサ型ダイオードと比べると。
         ⇒デメリット:逆方向の電圧を、薄い空乏層で無理やり遮蔽する
                ので、高電圧の遮蔽が難しい。メサ型に比べ
                高耐圧化するのにも色々と工夫が必要。
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■プレーナダイオードが高電圧を遮蔽できない理由
・ダイオードは、PN接合で電圧を遮蔽する。
 このとき下図「デバイスの弱点」で囲われた箇所が電圧遮蔽の弱点となる。
・理由は、プレーナ型ダイオードは、横方向にも強い電界が生じ、
 特に「デバイスの弱点」の箇所は、PNの境界面が角ばっているので、
 電界強度が強いから。(電界はとがったところに集中する性質がある)
 高電圧をかけると、電界強度の強いこの場所を起点に、(耐圧)破壊を起こす。
 そのためプレーナ型ダイオードは高電圧を遮蔽できない。
   ⇒この弱点部分を改善することが、そのままダイオードの高耐圧化につながる。
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■プレーナダイオードの高耐圧化技術
①ガードリング
 ・ガードリングを形成することで、「デバイスの弱点」に示す
  "角ばったPN境界" に集中する電界を緩和する。
 ・詳細はいずれ専用記事を書く。
②フィールドプレート
 ・フィールドプレートを形成することで、「デバイスの弱点」に示す
  "角ばったPN境界"(の電界)に丸みを帯びさせることで電界集中を緩和する。
 ・詳細は以下の記事に記載
③SIPOS(semi-insulating poly silicon)膜の使用
 ・保護膜/シリコン界面は結晶欠陥や汚れが生じやすい。
  これが横方向のリーク電流の原因となる。
  特に数千V以上の超高電圧遮蔽時にはこのリーク電流が
  問題となってくるため、改善が必要。
 ・これの対策として保護膜にSIPOS膜という材料を使用することで、
  保護膜の帯電を適度に緩和できる。
  すると「デバイスの弱点」で囲われた保護膜/シリコン界面の
  リーク電流が改善される。
 ・詳しいことは、そのうち専用記事を書く。